保育園には、 食物アレルギー を持つ子どももいます。 食物アレルギー は放っておくと命に係わる重篤な症状を引き起こします。この記事では看護師の私から新卒保育士さんに向けて 食物アレルギー とは何かと、その症状、保育園での対処法についてお伝えします。
1. 食物アレルギー とは?
食べたものが原因で、じんましん・湿疹・下痢・せき・呼吸がゼーゼーするなどの症状がおこることを 食物アレルギー といいます。
このようなアレルギー症状は体の中に入った異物を外に出そうとする「免疫反応」が過剰に反応してしまっている状態です。
その中でも一番キケンな症状を「アナフィラキシーショック」といいます。
新卒保育士さんも一度は耳にしたことがありますよね。
食物アレルギー は子どもから大人まで発症しますが、多くは乳児期に発症します。
成長とともに症状が落ち着いてくるケースがほとんどです。
食物アレルギー を持つ子どもの9割は、個人差はありますが、小学校入学までには自然と治っていくといわれています。
食物アレルギー の症状がでやすい乳幼児とかかわる保育士さんに、食物アレルギーの正しい知識と保育園での対処法を身に付けてほしいと思っています。
2. 食物アレルギー の症状と保育園での対処法
保育園で子どもに 食物アレルギー の症状がでたとき、すばやい対応がとても大事になります。
食物アレルギー の症状と保育園での対処法を知っておきましょう。
【症状】
食物アレルギー の症状
皮膚粘膜症状
・皮膚のかゆみ
・じんましん
・湿疹
・目の充血
・涙が出る
・まぶたの腫れ
消化器症状
・悪心(気持ちが悪い)
・嘔吐
呼吸器症状
・口の中、のどのかゆみ
・のどが腫れる
・くしゃみ、鼻水、鼻づまり
・せき
・呼吸がゼーゼーする
・呼吸困難
全身反応(アナフィラキシー)
・脈が速い(乳児:150回/分以上 幼児:130回/分以上がめやす)
・血圧が下がる
・意識がない、はっきりしない
参考: 厚生労働省 食物アレルギーとは
【観察点と保育園での対処法】
日ごろからの準備として、保育園であずかっている内服薬やエピペンをすぐに取り出せる場所に保管しておきましょう。
定期的に残量と使用期限を確認します。
残量が少ない、使用期限が近い場合には必ず保護者にあたらしいものを持ってきてもらうように伝えましょう。
※エピペンは太ももの外側にうちます。
エピペンとは
アナフィラキシーが起きたときに一時的に症状をやわらげる薬です。
アナフィラキシーを起こす危険がたかく、すぐに病院を受診できない状況にある患者や保護者が自分で注射をするために処方されます。
保育園でアナフィラキシーが起きた場合、保育士さんが注射をすることもあります。
保育士さんはかならず使用方法を確認しておきましょう。
・食物が原因と思われるアレルギー症状がみられる
・原因となる食物を食べてしまった(可能性を含む)
・原因となる食物に触れてしまった(可能性を含む)
その場合には、5分以内に次のことを観察して対処します。
緊急性が高いアレルギー症状
・ぐったりしていて意識がはっきりしない
・尿や便をもらす
・脈拍がふれにくい、リズムが遅くなったり速くなったりする
・唇や爪が青白い
・のどや胸の締め付けがある
・声がかすれる
・犬が吠えるようなせき
・息がしにくい
・強いせきこみがつづく
・呼吸がゼーゼーする
・強い腹痛がつづく
・繰り返し吐きつづける
【緊急性の高い症状がある場合】
・締め付けのある洋服をゆるめておく
・ただちにエピペンを注射する
・救急車をよぶ(119番通報)
・その場で安静にする
・可能なら内服薬をのませる
安静を保つ体位
・意識がない:子どもを仰向けにしてクッションなどで足元を15~30㎝高くする
・はきけ・嘔吐:からだと顔を横に向ける
・息が苦しい:上半身をおこす、いすの背もたれに寄りかからせる
呼びかけに反応がなく呼吸をしていない場合は心肺蘇生(心臓マッサージと人工呼吸、AEDの使用)を行います。
【緊急性の高い症状がない場合】
・内服薬を預かっている場合はのませる
・安静にできる場所へ移動
・少なくとも5分ごとに症状を観察する
・緊急性の高い症状が見られ場合はすぐに対処する
緊急性がない場合でも、時間が経ってから症状が出てくることもあります。
子どもの観察をしっかりとおこない、体調の変化に十分注意する必要があります。
食物アレルギー の疑いがある場合には、早めに小児科を受診しましょう!
3. 保育園での対処法を身に付けて子どもの命を守ろう!
食物アレルギー には、すばやい判断と対処が重要!
食物アレルギー を持つ子どもの情報は保育士さん全員がしっかりと把握しておく必要があります。
新卒保育士さんは、働いている保育園のアレルギーの対処法やマニュアルなどを確認するようにしてください。
そして、自分がアレルギー症状の出ている子どもをみつけたら、その子どもから離れずにまわりに助けを求めましょう。
アレルギーの症状は、子どもの体調によっても左右されます。 保護者から、子どもの体調や家での様子なども聞くようにしましょう。
いざという時にそなえて保育士さん同士、保護者とのコミュニケーションをしっかりととり、信頼関係を築くことも大切です。
正しい知識と対処法を身に付けることが子どもの命を守ることにつながります。