『 溶連菌感染症 』は新年度の初めによく見られる病気です。この記事では、それが何であるか、その症状、治療方法、および保育士さん向けに保育園で出来る 溶連菌感染症 の予防対策について説明します。看護師の私から、保育士のみなさんへ役立つヒントを提供していきます。
1. 学年の初めは病気のリスクが高い時期
新年度は大人でも環境の変化やストレスなどで、体調を崩しやすくなる時期です。
初めての園生活。
新しいお友達に新しい先生。
子どもたちにとって環境の変化は、大人以上にストレスを感じるものです。
ただでさえ免疫力の低い子どもたちがストレスを抱えることで、更に免疫力が下がっていくのが新年度。
保育士さんが新年度にかかりやすい病気の知識を身に付けると、病気の早期発見にもつながります。
今回ご紹介する『 溶連菌感染症 』は新学期に流行る病気の一つです。
放っておくと、こわい合併症を引き起こすこともあります。
看護師の私から、経験のない病気の対応に不安を抱える新人保育士さんにわかりやすくポイントをお伝えします。
2. 新年度に流行る『 溶連菌感染症 』とは?
感染症にはウイルス性のものと細菌性のものがあります。
『 溶連菌感染症 』は細菌性の感染症の一つです。
3~9歳の子どもに多い病気ですが、時には0歳児や大人もかかることがあります。
感染力がとても高い病気なので、特に新年度は保育園でも注意したい病気の一つですね。
潜伏期間は2~5日。
感染経路は「飛沫感染」「接触感染」です。
【症状】
・38~39℃程度の発熱・喉の痛み
・舌が腫れて表面にイチゴのような小さなボツボツが出る(イチゴ舌)
・咳や鼻水が少ない
・首のリンパ節の腫れ
・吐き気・嘔吐
・発熱・喉の痛みから1~2日経過して、胸、お腹、腕、足に細かい発疹が出る
※0~2歳児が感染した場合は発熱、咳や鼻水などの風邪の症状が現れます。
【治療】
・抗生物質の内服
【登園の目安】
罹患した場合の登園のめやすは「抗菌薬の内服後24~48時間経過していること」とされています。
抗生物質を飲んで、24時間のうちには熱が下がり、喉の痛みも一週間以内には軽減してきます。
しかし、薬を途中でやめてしまうと体の中に溶連菌が残ってしまい、また悪さをします。
合併症に腎炎や、リウマチ熱などの病気を引き起こす原因にもなるので、薬は最後まで飲み切ることが大切です。
【健康観察のポイント】
ポイント!
・登園した時の機嫌や活気
・首のリンパ節が腫れていないか、痛みはないか
・舌の表面が赤く腫れていないか、小さなボツボツはないか
・鼻水や咳は少ないけど、なんだかダルそう
・いつもよりも食べる量が少ない
・3歳未満の子どもの場合、咳や鼻水は出ていないか、ミルクの飲みはどうか
3歳以上の子どもが 溶連菌感染症 にかかった場合、一般的な風邪とは違い鼻水や咳が少ないという特徴があるため、パッと見た感じでは気が付かない場合があります。
「あれ?いつもより元気がないな。」
「いつもより食べる量が少ないな。」
という、保育士さんたちの感覚が
早期発見のカギになります。
いつも子どもたちと一緒にいる保育士さんだからこそ、気が付けるところもたくさんあります。
普段ならあまり見ない、舌に症状が出るのが特徴でもあるので、
「これって 溶連菌感染症 かも。」と感じたら子どもに舌を見せてもらいましょう。
保護者に受診をお願いする時に、保育士さんから詳しく症状を伝えることができれば、検査もスムーズに行えますし、病気の早期発見につながりますね
保育園でできる 溶連菌感染症 の予防対策
予防対策ポイント
・手洗い、うがい、手指消毒をしっかりと行う
・子ども同士の距離を保つ
・30分に1回、5分程度の換気を行う
・タオルなどの共用をしない
・おもちゃや遊具の消毒(次亜塩素酸ナトリウムやアルコールが効果的)
4. 新年度に向けて病気の知識を身につけよう
いかがでしたか?
今回は新年度に流行る病気の一つ『 溶連菌感染症 』についての説明と看護師目線での健康観察のポイント、保育園で出来る感染予防対策についてお伝えしました。
保育をしながら、感染対策をするのはとても大変ですよね。
ですが新年度は、子どもたちはもちろん保育士さんも病気になりやすい時期です。
少し気を付けることで
自分の身を守ることにもつながります。
子どもたちは集団生活を通して、免疫力を付けて身体が強くなっていきますが、悪化、重症化をさせないためにも正しい知識を身に付けて、新年度を迎えてほしいと思います。
少しでも参考になればうれしいです。