2025.5.22
幼稚園と保育園の違いを知り、自分に合った選択をしよう
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はじめに
お子さんに関わる仕事を考えている方なら、きっと「幼稚園で働くか、保育園で働くか」という選択肢に一度は迷った経験がありますよね。二つは一見似ているようですが、運営方針や働き方に大きな違いがあります。
この記事では幼稚園と保育園の違いや、それぞれの役割、資格、給与について少し掘り下げて解説します。また、就職活動やキャリア形成をどうすればいいかも考えていきますね。
この記事で得られること
1. 幼稚園と保育園の基本的な役割や目的が理解できる
2. 両施設の仕事内容・環境の違いがわかる
3. 自分に合った就職先を選ぶためのポイントを知る
4. 理想のキャリア形成に役立つ情報が手に入る
幼稚園と保育園の基本的な違い
施設の役割と管轄の違い
ま幼稚園と保育園の明確な違いは目的と管轄省庁です。
・幼稚園 幼稚園は教育施設であり、文部科学省が管轄しています。対象年齢は満3歳から小学校入学前の子どもで、教育的なアプローチを重視しています。幼稚園は小学校への準備段階とも位置付けられており、言葉、表現、社会性、運動能力などの発達をサポートします。
・保育園 保育園は福祉施設であり、厚生労働省の管轄です。対象年齢は0歳から小学校入学前までの幅広い年齢層で、保護者の代わりに子どもを保育することが主な目的です。教育よりも生活習慣のサポートが重要視され、特に家庭環境でのケアが難しい場合に頼れる施設です。
法律と運営基準
それぞれの運営には法令や設置基準の違いがあります。
・幼稚園
・法令:学校教育法
・保育目的:教育(「幼稚園教育要領」に基づく学び)
・保育時間:標準は4時間(延長保育で増加することも)
・給食:義務ではなく園の裁量による(弁当が一般的な場合も多いです)
・保育園
・法令:児童福祉法
・保育目的:保護者支援と子どもの健全な成長(養護と教育)
・保育時間:標準8時間、延長で11時間以上の場合も
・給食:提供が義務付けられている
大きな違いは「教育主体」か「保育主体」かです。
子どもの年齢層
・幼稚園 幼稚園に通う子どもたちは満3歳以上(場合によっては2歳児)です。この年齢層は子どもが自立して物事に取り組める場面も増えており、遊びから学ぶ教育的な活動が重要です。
・保育園 保育園では0歳から小学校入学前までの子どもが対象です。特に0歳から2歳児を預かる点が大きな特徴で、年齢ごとに違うケアやサポートが必要です。
0歳児は授乳・おむつ替え、1歳児では言葉を覚える手助け、2歳児では集団生活の慣れが目的になるなど、生活習慣の基礎作りが主な仕事となります。
幼保一体化による影響と「認定こども園」の普及
近年は「子ども・子育て支援新制度」によって、幼稚園と保育園の垣根を超えた取り組みが進んでいます。「認定こども園」はこの流れの中で誕生した施設で、幼稚園と保育園の両方の機能を併せ持つ環境です。
職場環境の比較:働き方や1日の流れ
幼稚園と保育園での働き方
幼稚園と保育園では一日のスケジュールや働き方が大きく違います。それぞれの特長を見て自分に合った職場をイメージしてください。
幼稚園の働き方
幼稚園教諭は子どもの教育に重きを置きます。
・勤務時間
標準的な教育時間は9時から14時程度ですが、それ以外に準備や事務作業、会議があります。預かり保育を導入する園では、幼稚園教諭がシフト制で夕方まで勤務することもあります。
・1日の流れ(例)
1. 7:30~9:00:出勤&教室準備
2. 9:00~9:30:子どもたちの受け入れ&朝の会
3. 9:30~11:30:カリキュラムに沿った活動
4. 11:30~12:00:昼食時間(お弁当または給食)
5. 12:00~14:00:自由遊びやクラブ活動
6. 14:00~15:00:降園準備&掃除
7. 15:00以降:預かり保育対応または事務作業(出欠確認、保護者対応など)
・特徴
幼稚園では授業終了後に事務作業や翌日の準備、行事の計画を行う時間が確保されていることが多いです。また、春休みや夏休みなどの長期休暇期間は研修やイベント準備が主な仕事です。
保育園の働き方
保育園は子どもの生活をサポートすることが主な役割です。0歳から5歳児まで幅広い年齢層の子どもたちが対象で、一年を通して多忙と言われることも。
・勤務時間
一般的に早朝から夕方までシフト制です。一般的な業務時間は7時から19時の間で、実働8時間程度です。延長保育や夜間保育がある場合、遅番シフトの終了時間が20時以降になることもあります。
・1日の流れ(例)
1. 7:00~9:00:早番スタッフの出勤、子どもの受け入れ
2. 9:00~10:30:年齢別の活動(遊びや学習の準備など)
3. 10:30~11:30:外遊びやお散歩
4. 11:30~13:00:昼食とお昼寝準備
5. 13:00~15:00:お昼寝タイム(この間に事務作業や清掃を行う)
6. 15:00~16:30:おやつタイム&自由遊び
7. 16:30~18:00:保護者対応&延長保育
- 特徴
保育園では乳幼児から小学校就学直前まで幅広い年齢層をサポートします。特に0歳児や1歳児はミルクの調乳、離乳食の準備、おむつ替えなどの日常ケアが多く求められます。一方、年上のクラスでは集団生活に適応する力や基本的な生活習慣を身につけてもらう保育が中心です。
幼稚園と保育園の日々の業務
項目 | 幼稚園 | 保育園 |
勤務時間 | 基本9時~14時+事務作業・準備 | シフト制(7時~19時の間) |
主な対象年齢 | 満3歳~小学校入学前 | 0歳~小学校入学前 |
保護者対応 | 降園時やカリキュラム説明のみ | 説明会+日々の子どもの成長報告が必要 |
保育内容 | 教育に重点を置いた活動(表現や学習) | 生活習慣の指導や豊かな遊びの場作り |
休暇 | 夏休み・冬休みなどの長期休暇がある | ほぼ年中無休(長期休みなし) |
あなたに合った働き方とは?
幼稚園・保育園のどちらが合っているかは、その人の価値観やライフスタイルによって違います。
・幼稚園が向いている方
・教育活動が好きで計画的に物事を進めることが得意な方
・比較的短時間勤務で規則正しい生活を求める方
・長期休みを利用したい方
・保育園が向いている方
・幅広い年齢の子どもと関わる機会を持ちたい方
・子どもの生活全般を支えることにやりがいを感じる方
・シフト勤務で柔軟な働きたい方
給料と福利厚生
幼稚園と保育園の給与
給与は就職先の施設形態や地域によって違いますが、傾向を理解しておくと役立ちます。
ここでは幼稚園と保育園それぞれの給与や年収について紹介します。
幼稚園の給与
幼稚園の給与は公立と私立で大きく違います。また、園独自のカリキュラムがどのくらい充実しているかによっても変わります。
・月収(例):約22〜25万円
・年間賞与(例):60〜80万円(2〜3か月分)
・年収(例):320万円〜380万円程度
特徴として、収入が安定しやすい公立幼稚園では全体的に高めの収入を得られる傾向です。私立では施設の運営状況に左右されるため、事前のリサーチが必要です。
保育園の給与
保育園の給与は運営が補助金や自治体の規定によって支えられているため、地域によって違います。
・月収(例):約22〜26万円
・年間賞与(例):50〜80万円(2か月以上が多い)
・年収(例):330万円〜400万円程度
認可保育園では処遇改善手当(給与追加)が支払われることもありますが、認可外の保育園ではその分減額されることも。詳細は求人票や面接時に確認してください。
給料の比較
項目 | 幼稚園 | 保育園 |
月収 | 22万〜25万円程度 | 22万〜26万円程度 |
年収 | 約320万〜380万円 | 約330万〜400万円 |
賞与 | 2〜3か月分 | 2か月以上多い |
残業代 | 園による(少ない傾向) | 園による(支払ありが多め) |
処遇改善手当 | 対象外 | 対象あり(認可園のみ) |
福利厚生
働く環境には給与だけでなく福利厚生も重要です。幼稚園と保育園それぞれの特徴を見ていきましょう。
・幼稚園
・長期休暇あり(夏休み、冬休みが取りやすい)
・家賃補助や住宅手当は少ない場合が多い
・入職時に研修制度や教材提供などの教育系福利厚生が多い
・保育園
・処遇改善手当あり(保育士の給与を国が一部補助)
・シフト制で有給が取りやすい雰囲気の園も多い
・住宅手当や家賃補助、引っ越し代補助など、施設によっては充実している
給与アップを目指す
給与をアップさせたい方は以下を参考にしてください。
1. 公立施設を目指す: 幼稚園でも保育園でも、公立施設は給与水準が高めです。賞与や手当がしっかり支払われるため安定感もあります。ただし、採用試験があるのでしっかり準備しなければいけません。
2. 処遇改善手当の活用: 認可保育園では国からの補助で処遇改善手当が支給される場合があります。実際に月額数万円程度アップすることもあり、要確認ポイントです。
3. 資格取得や経験を活かす: 幼稚園教諭であれば保育士資格を、保育士であれば幼稚園教諭免許を取得することで「認定こども園」へ就職できるようになります。
福利厚生と働きやすさの比較
項目 | 幼稚園 | 保育園 |
休暇制度 | 長期休暇あり(夏休み、冬休みなど) | 年中運営(長期休暇なし) |
手当・補助 | 教材や活動に関連する補助が多い | 家賃補助、処遇改善手当がある場合も |
キャリア研修 | 資格取得よりも業務のスキルアップ研修が多い | 資格取得のサポートなどが厚い場合がある |
あなたに合う職場選び
1. 長期的な安定が目的:公立幼稚園・認可保育園を選ぶと良いでしょう。給料や待遇が安定しやすく、家庭との両立もしやすいです。
2. 柔軟な対応重視:保育園ではシフト制が多く、ライフスタイルに合わせた働き方を実現しやすいです。
3. 給与を重視:処遇改善手当の有無をチェックし、スキルを活かしてキャリアアップを目指すのがベストです。
両資格を活かせる「認定こども園」
認定こども園の概要
認定こども園は日本の教育・保育業界の変化に伴い誕生した新しい施設形態で、「幼稚園」と「保育園」の両方の役割を兼ね備えた施設として注目されています。特に、保育士資格と幼稚園教諭免許の両方を持つ方にはこれまで以上に活躍の場が広がります。
・設立の背景
幼稚園と保育園はそれぞれ違う運営目的でしたが、「子ども・子育て支援新制度」によって両者を一体化させた仕組みが進められました。教育や保育が必要な全ての子どもたちに質の高いサービスを提供することが目的です。
・特徴
認定こども園では教育+保育の両方を包括的に提供します。子どもの成長や家族のニーズに細やかに応えられるように設計されています。
認定こども園の種類
認定こども園には主に4つのタイプがあります。それぞれの特長を理解して自分に合った職場を見つけましょう。
1. 幼保連携型
幼稚園と保育園の両方の機能を一体化させた施設です。一つの施設内で教育と保育を実施し、教職員も両方の資格(保育士・幼稚園教諭)が必要です。
2. 幼稚園型
主に認可幼稚園に保育園機能を追加した施設です。幼稚園スタイルを基盤としつつ、保育ニーズのある家庭にも対応する仕組みが整っています。
3. 保育所型
認可保育園が基盤となり、幼稚園的な教育機能を付加した施設です。保育園スタイルを維持しながら、3歳以上の子どもたちには教育的プログラムも行います。
4. 地方裁量型
地域の事情や施設による運営形態が違う施設です。地方自治体が独自に認定を行っており、他タイプよりも多様性があります。
認定こども園で働くための資格
認定こども園では保育士資格と幼稚園教諭免許の両方を持つことが原則となっています。ただし、2024年度末まではいずれか一方の資格を保有していれば働ける特例措置がとられている場合もあります。
認定こども園でのメリットとデメリット
・メリット
1. スキルの幅広さが生かせる
教育と保育の両方を行うので、総合的なスキルを活かした働き方ができます。
2. 世代をまたいだ保育
0歳から小学校入学前まで、さまざまな年齢層の子どもと関わることで様々な経験を積むことができます。
3. 就職先の拡大
幼稚園や保育園よりも選択肢が広がり、両資格を持つことで給与が高い。
・デメリット
1. 業務範囲の広さ
教育も保育も行うので業務内容が多い。それをプレッシャーを感じる人もいます。
2. 求められるスキルの高さ
両方の資格を活かして働くため、それぞれの知識や技術を要求される場面が多くなります。
認定こども園に向いている人
認定こども園に向いている人の特徴を以下にまとめました。
・幅広い年齢層の子どもと関わることに興味がある
・保育だけでなく教育にも関心がある
・幼稚園でも保育園でもなく、新しい挑戦をしてみたい
認定こども園の1日のスケジュール例
認定こども園では教育と保育の両方を行うので、時間配分が工夫されています。1日のスケジュール例を参考にしてください。
1. 7:00~9:00:子どもの受け入れ、自由遊び(早番職員が担当)
2. 9:00~10:00:カリキュラム活動(年齢別の教育プログラム)
3. 10:00~12:00:外遊び、身体を使った活動
4. 12:00~13:00:昼食時間
5. 13:00~15:00:お昼寝(乳幼児)、自由活動(3歳以上)
6. 15:00~16:30:おやつ、自由遊び
7. 16:30~18:30:延長保育対応、保護者対応
認定こども園を選ぶポイント
認定こども園を検討する際には、以下のポイントをチェックしましょう。
・施設の運営方針:教育重視なのか、保育重視なのかを確認。
・資格要件:特例措置が適用されているかどうか、募集要項をチェック。
・働きかた:シフト制や、労働時間の詳細を把握する。
・職場環境:スタッフのスキルバランスやサポート体制を調べる。
認定こども園は幼稚園と保育園の「いいとこ取り」をした施設といえます。
これから保育士や幼稚園教諭として就職する方には、選択肢の一つとして検討する価値があります。
スキルや経験を伸ばしながら働ける機会を最大限活かしましょう。
転職や就職のポイント
自分に合った職場を選ぶ
働きやすい職場を見つけるには給与や待遇だけでなく、職場環境や自分の価値観に合った条件を確認することが重要です。ここでは、幼稚園・保育園・認定こども園を問わず、自分に合った施設を選ぶためのポイントについて解説します。
職場選びのポイント
1. 園の運営方針や理念
職場選びで最も大切なのは自分が共感できる運営方針かどうかです。保育や教育に対する取り組み方は園ごとに違います。自由保育を推進する施設もあれば、カリキュラムに基づいてしっかり教育する施設もあります。
・質問の例:
・子どもたちにどのような成長を期待しているか?
・保護者や地域との関係性をどのように築いているのか?
2. 働き方や勤務時間
シフト制か固定時間勤務か、残業時間、休暇の取りやすさなどを確認しましょう。家族との時間を重視したい方は勤務時間が安定してプライベートを確保できる環境が向いています。
・気を付けたい点:
・シフトによる業務負担(早番や遅番など)
・季節ごとのイベントや行事準備が時間外で発生しないか
3. 給与や福利厚生
給与の基本額はもちろん、賞与や各種手当、福利厚生が充実している施設ほど長く働きやすい職場となります。特に保育所では処遇改善手当がもらえる場合もあり、具体的な仕組みを確認すると良いでしょう。
・チェックすべき内容:
・月給・時給のほか、賞与や昇給制度はあるか
・家賃補助や交通費支給の有無
4. キャリアアップの支援体制
資格の取得支援や研修制度が充実している職場は自分自身が成長できます。特に保育士から認定こども園に進む場合など、さらなるスキルアップを目指している方には重要です。
・例:特例措置による資格取得支援(保育士資格+幼稚園教諭免許の両方をサポートする施設もあります)
5. 人的環境や雰囲気
職場の人間関係やチームワークの雰囲気は働いていく上で非常に重要です。見学や面接時に施設内の様子も確認しましょう。
・質問例:
・職員同士の情報共有の仕組みは?
・定期的な会議や相談会の開催状況
職場見学で確認するポイント
職場見学は現場の様子を直接確認できる貴重な機会です。以下のような点を重点的にチェックしましょう:
1. 施設設備
子どもたちが安全に過ごすための設備や清潔感をチェックします。
2. 働いている職員の雰囲気
職員同士のコミュニケーションが取れているか、モチベーション高く働いている様子が見られるかなどを観察しましょう。
3. 子どもたちの様子
子どもたちが落ち着いて楽しんで活動しているか、安心して過ごせる環境が整っているか確認してください。
面接や相談会で聞く質問例
・保育士や幼稚園教諭としての成長をサポートする制度はありますか?
・自由保育ですか、それとも先生主導での活動がメインですか?
・月ごとの行事やイベント頻度、その準備にどの程度時間をかけますか?
・仕事量が増えた場合、職場全体でサポートしてくれますか?
自分に合わない職場を避ける方法
一方で、次のような環境は注意です:
1. 職員の離職率が高い:頻繁に職員が退職している職場は環境に課題がある可能性があります。
2. 長時間残業が続く:保育時間外の勤務が多ければ体力的、精神的に負担となります。
3. 管理職やリーダーの不在:リーダーや園全体の指針が不明瞭であれば現場の混乱や過重労働につながります。
転職・就職を成功させるために
1. 情報収集は広く、慎重に
求人票だけでなく、実際の職場を見学して現場感を重視しましょう。
2. 自己評価を明確に
自分の得意分野、伸ばしたいスキルを考慮しながら求人案件を選ぶと後悔しにくいです。
3. 信頼できるエージェントを活用
保育士・幼稚園教諭の転職支援サービスを利用すると、非公開求人や詳細な職場情報を得られることもあります。
自分に合った選択で理想の働き方を実現しよう
幼稚園や保育園、認定こども園にはそれぞれ特徴や働き方の違いがあります。教育的な環境を希望する方は幼稚園、生活支援や幅広い年齢層と関わりたい方は保育園が向いているかもしれません。
また、両資格を活かせる認定こども園は、これまで以上に柔軟で包括的な働き方ができます。
就職や転職を成功させるためには自分の価値観やライフスタイルに合わせてじっくり考えることが大切です。
職場の雰囲気や運営方針を見極め、多角的にリサーチすることで、長く安心して働ける職場に出会えるでしょう。
どの選択肢が自分に合っているのかを明確にして、希望に合ったキャリアを築いてくださいね!