保育士のための「正しい療育」ガイド:良い例と悪い例を学び適切な対応を実践しよう

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2025.1.31

保育士のための「正しい療育」ガイド:良い例と悪い例を学び適切な対応を実践しよう

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こんにちは。日々、発達障がい児やその保護者に寄り添い、奮闘されている保育士の皆さま、本当にお疲れさまです。

療育の現場では、子ども一人ひとりに合わせた対応を求められる中、適切な配慮ができないと悩みや苦労を感じている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

 

本記事では、療育の基本的な知識から具体的な対応方法、さらに現場で役立つ実践方法を詳しくご紹介します。

また、良い例と悪い例を交えることで、よりリアルなケーススタディを学び、現場に活かせる内容に仕上げました。これが、保育士の皆さまのスキル向上に役立てば幸いです。

この記事で分かること
1. 「療育」とは何か、それを保育の場にどう取り入れるか
2. 発達障がい児の特性を理解し、具体的な配慮を行う方法
3. 保護者対応の重要性とその進め方
4. 療育における良い例・悪い例の現場での活用
5. 保育士が療育で果たすべき役割や成長するためのヒント

 

療育とは何か

「療育」という言葉を耳にする機会は増えているものの、実際の定義が曖昧でイメージしづらい方もいるかもしれません。

療育とは、障がい児や発達に特性のある子どもを対象に、生活スキルの習得、自己肯定感の向上や社会適応を助ける教育法や治療法を指します。これには医療の観点や教育の側面が含まれ、「その子の得意なことを伸ばし、困っている部分を支援する」ことが最終的なゴールとされています。

療育の対象となる子どもは、発達障がいと言われる自閉症スペクトラム(ASD)、注意欠如・多動性障がい(ADHD)、学習障がい(LD)を持つ子どもが主ですが、そのほかにも知的障がいや肢体不自由を持つ子どもたちにも取り入れられています。

療育の目的とその重要性

療育の中心的な目的は「子どもが持つ困難をなくすこと」ではありません。

むしろ、その子どもが持っている「得意な部分」をしっかり伸ばし、それを活かして日常生活や社会生活に適応する力を育むことにあります。

それが、療育の最大の特徴といえるでしょう。この根本的な考えを理解しないまま対応すると、「できないことを叱責する」といった誤ったアプローチに陥るリスクがあります。

例えば、療育を適切に行うことで次のような変化が期待されます

• 自分の行動をコントロールしやすくなること
• 目の前の課題や活動に集中できる力をつけること
• 他者とのコミュニケーションがスムーズにいくようになること
• 身近な人や環境から一定のルールや秩序を学び、その中で安心して自分を表現できるようになること

療育が早期に始まれば、子どもの成長スピードに合わせた支援が進み、長期的な成長が期待できるのも利点です。

療育と保育の違い

療育と保育は似ているようですが、その役割や目的が大きく異なります。正しく区別し、どちらに重点を置くべきかを適切に判断することが、保育士としてのスキルアップの大前提となります。

【療育と保育の目標と特徴の違い】

 

項目 療育 保育
目的 社会的自立・スキルの習得 健全な成長と心身の保護
対象者 障がいや発達の特性を抱えた子ども  全ての乳幼児
実施の方法 個別プログラムを重視、特性に応じた計画を実行 年齢層ごとに集団活動を中心にバランスよく行う
専門性の有無 医療や心理の専門家との連携が不可欠 主に成長期に合った基本的保育活動

 

例えば、保育は「安心して過ごせる環境」を提供する役割が大きい一方、療育では「特性に配慮した個別的な支援」を重視して実施される点が特徴です。この違いを理解しながら、療育現場と保育園で連携することが重要になります。

保育士として知っておきたい療育メソッド

保育士として療育に取り組む際、現場で活用できる具体的な療育メソッドを知っておくことは、子ども一人ひとりに寄り添った支援を行う上で非常に効果的です。

以下に代表的な療法をいくつかご紹介します。

1. TEACCHプログラム

対象:主に自閉症スペクトラム(ASD)の子ども
方法:視覚的な手がかりを用いたスケジュールや教材を使い、活動の順序や目標を明確にする。
目的:子どもが自身のペースで環境に適応できるようサポート。

具体例
Aちゃんは次の活動への移行時に混乱しやすい傾向があります。その際、一つ前の活動を終了する「終わりカード」を見せ、次に行う活動のアイコンを並べて説明することで、焦らずに行動できるよう促します。

2. ABA(応用行動分析)

対象:行動パターンに困難さを抱える子ども
方法:子どもの行動を観察し、望ましい行動を増やすために計画された環境で繰り返し練習。
目的:子どもが社会的スキルを少しずつ身につける。

具体例
Bくんはみんなと遊ぶ中でおもちゃを取り上げようとしてしまう場面がありました。そこで、事前に「おもちゃは順番に使うよ」という視覚支援ツールを用いたルールを示し、取り組みのたびに成功した際は「すごく上手に貸し借りできたね!」と具体的に褒め、成功体験を重ねることで行動の改善を図りました。

3. 音楽療法

対象:全般的な刺激に敏感な子ども
方法:歌や楽器を通じ、情緒の安定や集中力の向上を図る。
目的:リズムによる感情表現の習得や社会性の向上。

具体例
Cくんは感覚過敏の傾向があり、クラス活動中に不安定な行動が見られることがありました。その際、穏やかな歌を保育士が歌うことで落ち着きを取り戻し、徐々にクラス活動に戻ることができるようになりました。

 

各療育法を知り、子どもの状況や特性に合わせた方法を選択することが、療育を効果的に進めるポイントです。次の章では具体的な事例をもとに、より実践的な視点から良い対応例と悪い対応例をご紹介します。

発達障がい児への正しい対応法:良い例 / 悪い例

療育の現場では、子どもたち一人ひとりの特性や状況に応じた柔軟な対応が求められます。しかし、その取り組みが必ずしも成功するとは限りません。ここでは、療育がうまくいった「良い例」と、改善が必要な「悪い例」を具体的に挙げ、保育士としてどのようなアプローチが適切かを詳しく考えます。

良い例:柔軟な対応で課題をクリアする

ケース:1. Aくん(ASDの傾向が強い子ども)の場合

Aくんは日課の切り替えが苦手で、なかなか次の活動に進むことができませんでした。例えばおもちゃで遊んでいる最中に片付けの時間が来ても納得できず、癇癪を起こすことが頻繁に見られました。

対応策:視覚的スケジュールと予備行動の導入

o 工夫: 保育士は遊びの終了10分前に「あと〇〇分でお片付けです」とタイミングを知らせるカードを使用。また、遊び終える準備として、「お片付けソング」を流すことでルーティン化を促しました。
o 結果: Aくんはこれらの視覚的・聴覚的サインを把握することで安心し、少しずつお片付けに取り組めるようになりました。

ケース:2. Bくん(ADHDの傾向がある子ども)の場合

Bくんはお絵描きの時間中、席を立って集中が切れやすく、途中で教室をうろうろしてしまうことがありました。そのたびに指導されることでさらにストレスを溜め、活動から離れてしまうことがありました。

対応策:短時間の活動とポジティブな声掛け

o 工夫: 保育士はお絵描きの課題を短いステップに分け、達成感を得やすい形に設定。また、席を離れるたびに咎めるのではなく、「ここまで描いたら休憩しようね」とポジティブな声掛けを心がけました。
o 結果: Bくんは徐々に机に向かう時間が長くなり、「ここまで頑張れた!」という達成感を覚え、楽しみに変えていきました。

悪い例:感情的な対応が悪循環に陥る

ケース:3. Cちゃん(感覚過敏のある子ども)の場合

Cちゃんは指先を使う細かい作業に苦手意識をもち、粘土遊びなど素材に触れる際に拒否反応を示すことが多々ありました。しかし、この状況に対し保育士が十分な観察をせず、その都度「どうしてできないの?」と理由を問いかけてしまいました。

問題点: Cちゃんの特性を考慮しないまま不必要なプレッシャーを与えたことで、作業そのものへの不安感がさらに高まってしまいました。
改善方法: 感覚過敏に配慮し、「好きな形を作るだけでいいよ」など選択肢を提示することで自由度を広げ、無理なくステップアップできる道を示してあげるべきでした。

ケース:4. Dくん(多動・衝動が目立つ子ども)の場合

Dくんは並んで待つ状況が苦手で、遊具を使う順番を守れないことがありました。そのたびに保育士は声を荒げて叱る一方、どうすれば待てるようになるかの具体策を示さない対応をとってしまいました。

問題点: 叱責だけではDくん自身の行動改善につながらず、同じ行動を何度も繰り返してしまいました。保育士もストレスを抱える悪循環に。
改善方法: Dくんの行動を「どうすれば改善できるか」という視点で観察し、例えば「順番を示すカード」を活用するなど具体的なツールを導入すべきでした。小さな成功を重ねていく環境作りが必要でした。

保護者との信頼を築くための具体的な取り組み

療育において重要なポイントの一つが、保護者との円滑なコミュニケーションです。子どもの成長を支えるためには、家庭と園が一体となって取り組む姿勢が不可欠です。保育士から保護者への働きかけがどのように信頼関係につながるかを具体的に見ていきましょう。

信頼関係を強める3つのステップ

1. 日々の園での成功体験を報告する

o 実践 : 毎日の連絡帳やお迎え時に、「今日はこんなことができました」と具体的なエピソードを伝えることで、保護者も安心感を抱けます。小さな成長段階でも、言葉にして伝えることが信頼につながります。
o : 「今日、ブロックで友達と協力して遊ぶことができました。最後に『また一緒に遊ぼうね』と言えた姿に感動しました。」

2. 家庭で試せる支援方法を提案

o 実践 : 保育士が園内で実施している療育方法を保護者にも共有し、家庭での対応のヒントを提供する。
o : 「今日取り組んだ◯◯遊びはお家でも簡単にできます。お絵描きの際に好きな色を選びながら同じように取り組んでみてはいかがでしょう?」

3. 継続的な学びを話題に出す

o 実践 : 保育士自身のスキルアップ活動をさりげなく話題に出し、積極的に療育に取り組んでいる姿勢を見せることで保護者の信頼感を高める。
o : 「今月、新たに学んだ手法で△△くんが取り組みやすくなりそうな方法を試してみたんです!」

続きます…

療育現場での課題と今後の展望

療育の現場では、子ども一人ひとりの成長を支える喜びを感じる一方、新たな課題も多く存在します。

特に、保育士個人への負荷や、現場全体の連携不足が課題になることが多いです。

これらの問題を改善し、療育をより効果的なものにしていくための取り組みについて考えます。

1. 保育士一人に負担が集中しやすい現状を改善

療育では、一人の保育士が多くの役割を担う場面があります。それによって、業務の負担が一人に偏り、スムーズな支援が難しくなる場合があります。

改善案:チームでの役割分担
o 子どもの日常的な行動記録を、全スタッフで共有する時間を確保し、「誰がどの役割を担うのか」を明確にしましょう。
o 1週間単位でミーティングを行い、「この期間で実施した支援と、その結果」を振り返る時間を設定する。
福祉専門職や外部アドバイザーと連携
o 地域の発達支援センターや療育施設と定期的に連携を取り、子どもの発達や対応の課題を専門的に検討する機会を設けることで、保育士一人の負担を軽減できます。

2. 保護者との連携を強化する仕組み作り

保護者にとって、我が子が療育の支援を必要とするという現実は、時に受け入れるまでに時間を要することもあります。そのため、保育士として「適切な距離感」と「無理のない連携」を意識することが重要です。

連絡ノートの活用
o 子どもの園での成長や成功事例、保護者が家庭で感じた些細なお困りごとを共有できるツールとして、連絡ノートや週次レポートをフル活用しましょう。
o 「〇日にこんなイベントがありますので、みんなで取り組みます!」といった温かいサポートメッセージも加えると、保護者が療育に安心感を持つきっかけになります。
保育士からの小さな成功報告
o 該当する特性を持つ子どもが少しずつ達成していく場面を伝えましょう。たとえ小さな達成でも「これが次の大きな成長に繋がります」という言葉で保護者に前向きな気持ちを促せます。

3. 地域全体での療育ネットワーク形成

療育を効果的に進めるためには、保育園や療育センターだけでなく、地域や自治体全体が協力するネットワークが必要です。地域資源を最大限に活用する具体的な提案を行いましょう。

地域の勉強会やセミナーに参加・提案
o 自治体が主催する療育や発達支援に関する研修に参加し、そこで得た知識を保育園内でも共有します。
o 「保育士・保護者合同学びの会」を開催し、発達障がいの理解を広げる機会を作りましょう。
近隣園や療育施設との交流
o 定期的に近隣の保育園や発達支援センターを訪問し、情報交換をすることで、異なる視点からの支援が可能になります。

保育士としてのスキルアップと療育への取り組み方

療育が求められる現場では、保育士自身も学び続けることが不可欠です。

療育の知識を広げることで、自分にしかできない支援を提供できるようになります。

1. 療育スキルを高める継続学習

研修への参加
o 発達障がいや療育に特化したオンラインセミナーや集合研修は、自己啓発にもつながります。
o 具体的には、「応用行動分析」や「感覚統合療法」の基礎講座を受けると、現場で即実践できる知識が増えます。
療育に関連した書籍を読む
o 「発達障がいの基礎知識」や「障がい児支援のための実践マニュアル」といった教材は、現場での事例に沿ったプランを学ぶヒントになります。

2. 医療専門資格の取得を目指す

保育士資格を活かせる幅を広げるために、以下の専門資格に挑むことも選択肢です。
作業療法士(OT)
o 子どもの社会性や動作に関連する療育スキルを学べる国家資格。
音楽療法士
o 音の働きを活用した支援スキルを活かして、感情や行動を安定させる方法を学べます。
発達支援アドバイザー
o 発達障がいを持つ子どもやその家庭の生活環境を整える専門家。

3. 現場での成功体験を積み重ねる

日々の実践の中で、自分なりの成功体験を重ね、それを書き留めて振り返ることが重要です。
事例記録をつける
o どんな課題があったのか、どのようなアプローチで何が変わったのかを記録します。
同僚と振り返りを行う
o 保育士同士で成功体験や失敗して学んだことを話し合う場を作ることで、お互いの成長を助けます。

まとめ:子どもの成長と保育士自身の可能性を広げよう

療育は、子ども一人ひとりに寄り添った支援を通じて、その子らしい成長を促します。そして、それを支える保育士の皆さんは、子どもの未来を形作る重要な存在です。

この記事で紹介した知識や事例を参考に、小さな成功体験を積み重ね、子どもたちの笑顔とともに前進しましょう。
どんなに小さな一歩でも、それが次の大きな飛躍の鍵となります。あなたの持つ力と日々の努力が、療育の現場で、そして社会全体でさらに広がり、輝きますように。

 

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