2021.10.16
保育ドキュメンテーションとは?保育への効果や導入のポイントを詳しく解説
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目次
1. 保育ドキュメンテーションって、なんだか難しそう…と思っていませんか?
「保育ドキュメンテーションって、なんだか難しそう…」「日々の業務にプラスして、さらに仕事が増えるのは大変かも…」 そんな風に感じていませんか?
この記事では、多くの保育現場で注目されている「保育ドキュメンテーション」について、その本当の価値や無理なく現場で活かすための具体的な方法を分かりやすく解説します。
保育ドキュメンテーションは単なる記録作業ではありません。子どもたちの成長を「見える化」し、保育者や保護者と共有して子どもの主体的な学びをぐっと引き出し、保育の質そのものを向上させる力を持っています。
例えば、夢中でブロック遊びをする子どもの写真一枚と「今日はこんなお城を作っていたよ」という一言。それだけでも保護者にとっては園での生き生きとした姿を知る大切な窓口になります。この記事を読み終える頃には、保育ドキュメンテーションへの不安は「明日からさっそく試してみたい!」というわくわくした気持ちに変わっているはずです。
2. 保育ドキュメンテーションとは
保育ドキュメンテーションとは、子どもたちの日々の活動や探求のプロセスを写真や動画、子どもの言葉や作品といった具体的な形で記録して見えるようにすることです。
この手法は教育先進国イタリアの「レッジョ・エミリア・アプローチ」という教育実践から世界に広がりました。単に活動の様子を記録するだけでなく、その記録をもとに「この子は今、何に夢中なんだろう?」「この遊びからどんなことを学んでいるんだろう?」と保育者や子ども自身、そして保護者が一緒に考えて対話し、次の豊かな学びへとつなげていくことを大切にしています。
イベントのような特別な日だけでなく、普段の何気ない遊びや生活の中にある子どもたちの輝きや葛藤、試行錯誤の瞬間を捉えることが保育ドキュメンテーションの神髄と言えるでしょう。
3. どうして保育ドキュメンテーションが重要か
ではなぜ今、この保育ドキュメンテーションがこれほどまでに重要視されているのでしょうか。その理由は大きく3つあります。
子どもの学びの「見える化」
大人の目から見ればただの「お絵描き」や「砂遊び」も子どもにとっては壮大な探求活動です。ドキュメンテーションは子どもが何を考え、何を感じ、どのように世界と関わっているのか、その学びのプロセスを具体的に見せてくれます。
子どもの主体性の尊重
記録を通して子どものつぶやきや興味関心を丁寧に拾い上げ、保育者は子ども一人ひとりの「やりたい!」という気持ちを保育の中心に据えることができます。子どもは「自分の気持ちを分かってくれる」と感じ、より意欲的に活動に取り組むようになります。
保育の質の向上
作成したドキュメンテーションは保育者同士が子どもの姿について語り合うための共通言語になります。一人の保育者では気づかなかった視点や発見を共有し合うことで、チーム全体の保育観が深まって組織的な保育の質の向上へとつながるのです。
4. 保育ドキュメンテーションを導入するメリット
保育ドキュメンテーションを導入することは、子ども、保護者、そして保育者自身にとってもたくさんのうれしい変化をもたらします。
4-1. 「見える化」により子どもの成長を実感できる
日々めまぐるしく成長する子どもたち。ドキュメンテーションはその一つひとつの成長の足跡を記録してくれます。
「昨日までできなかった逆上がりに挑戦している真剣な表情」「初めてハサミを使えた時の得意げな顔」など、成長のプロセスが形として残ることで、子ども自身も保育者もその成長をより深く実感できます。
4-2. 保護者との関係性強化につながる
連絡帳の文章だけでは伝えきれない園での生き生きとした様子を写真や動画付きで共有することで、保護者は大きな安心感と信頼感を抱きます。
「家では見せないような表情で友達と笑い合っているんですね!」「そんな難しいことに挑戦していたなんて知りませんでした」といった驚きや喜びの声は、家庭と園をつなぐ強い絆になるでしょう。園での様子が分かることで家庭での会話のきっかけも生まれます。
4-3. 保育者の能力向上につながる
ドキュメンテーションを作成する過程は保育者の専門性を高める絶好の機会です。
・観察力: 子どもの行動の背景にある意図や感情を読み取ろうと、より深く観察するようになります。
・記録力: 何をどのように記録すれば伝わるかを考えることで、情報を整理し表現する力がつきます。
・省察力: 記録を振り返ることで自身の保育やかかわり方を見つめ直し、改善していく力が養われます。
これらはすべて、保育者として成長していく上で欠かせない大切なスキルです。
4-4. 保育の質の向上が期待できる
ドキュメンテーションを通して子ども理解が深まることで、保育者は次の活動計画をより子どもの興味や発達に沿った形で立てられるようになります。
「この遊びが好きなAちゃんのために、次はこんな素材を用意してみよう」「Bくんの探求心を広げるために図鑑を置いてみたらどうだろう?」といった具体的なアイデアが生まれやすくなり、保育全体の質が自然と高まっていくのです。
5. 保育ドキュメンテーションを導入するデメリットとは
多くのメリットがある一方で、導入にあたってはいくつかの課題や注意点もあります。事前に理解しておくとスムーズな導入につながります。
最も大きな課題は保育者の業務負担が増加することです。写真撮影やコメント作成、掲示物の制作などに時間がかかり、日々の保育や他の事務作業を圧迫してしまうケースは少なくありません。
また、「記録を作ること」自体が目的になってしまい、保育の本質を見失う「形式主義化」に陥る危険性も指摘されています。他のクラスや保育者との比較がプレッシャーとなり、「すごいものを作らなければ」と追い詰められてしまうことも考えられます。
子どもの写真や動画を扱う上では個人情報保護への配慮が不可欠です。データの管理方法や共有範囲については園全体でルールを明確に定め、徹底する必要があります。
6. 保育ドキュメンテーションを行うポイント
では、デメリットを乗り越えて保育ドキュメンテーションをうまく活用するにはどうすればよいのでしょうか。大切なのは「完璧を目指さない」ことと「効率化」です。
6-1. 保育者の負担を増やさないよう注意する
まずは、無理なく続けられる範囲から始めることが重要です。
従来のやり方を大きく変更しない
いきなり全員で大々的に始める必要はありません。「まずは週に一度、特定の活動だけ記録してみる」「日誌に写真を一枚添えることから試す」など、スモールスタートを心がけましょう。
大切なのは立派な掲示物を作ることではなく、子どもたちの姿を記録して共有することです。手書きのメモと写真一枚からでも、立派なドキュメンテーションは始められます。
業務のICT化を行う
記録や共有の作業を効率化するために、ICT(情報通信技術)を使うのも非常に有効です。
タブレット端末を使えば、その場で写真を撮ってすぐにコメントを入力できます。保育支援システムなどのツールを導入すれば記録の作成から保護者への共有までをスムーズに行うことができ、保育者の事務負担を大幅に減らすことができます。手作業の作成に課題を感じている場合は、こうしたツールの導入を検討してみるのも一つの解決策です。
7. 保育ドキュメンテーションの実践の仕方とは
難しく考える必要はありません。以下の3つのステップを意識するだけで、誰でも実践できます。
7-1. 保育の記録をとる
まずは、子どもたちの「これだ!」と思う瞬間を写真や動画で記録しましょう。
・楽しそうな笑顔や夢中になっている真剣な表情
・友達と協力したり、時にはぶつかり合ったりする姿
・指先で何かをつまんだり、道具を使ったりしている手元
写真だけでなく、「どうしてそう思ったの?」「次はどうしたい?」といった子どもの言葉や会話をメモしておくと、記録がより深みを増します。
7-2. 活動記録を保護者と共有する
記録した内容は保護者の方々と共有してこそ価値が生まれます。
共有の方法はさまざまです。
・園内の掲示板に貼り出す
・連絡帳アプリなどでデータ配信する
・子ども一人ひとりのファイル(ポートフォリオ)にまとめる
掲示する際は、保護者の方がコメントを書き込めるように付箋を用意しておくのも良いです。保護者からの反応が保育者の新たな気づきにつながることも少なくありません。
7-3. 制作物などの掲示を行う
子どもたちが作った作品そのものも、素晴らしいドキュメンテーションの一部です。
作品をただ飾るだけでなく、「この色を選んだのは、昨日見たお花がきれいだったからなんだって」「お友達と協力してこんなに大きなものを作ったんだよ」といった制作の背景にあるストーリーや保育者のコメントを添えることで、作品の価値がより一層伝わります。
8. まとめ
保育ドキュメンテーションは子どもたちの何気ない日常に隠された学びや成長の物語を紡ぎ出すとてもパワフルなツールです。
最初は難しく感じるかもしれませんが、完璧を目指す必要はありません。大切なのは子どもたちの姿に真摯に向き合い、その輝きを記録して共有しようとする姿勢です。
この記事でご紹介したポイントを参考に、まずは「楽しそう!」と感じる小さな一歩から始めてみませんか?写真一枚、メモ一言から始まるその取り組みが子どもたちの豊かな育ちを支え、保護者との信頼を深め、そして何よりあなた自身の保育をより楽しく、実りあるものにしてくれるはずです。











