受け継がれる思いやり
「保育士って職人のようだ」
取材をさせて頂くたび
プロフェッショナルな保育士さんの姿に感嘆しています。
騒がしかった子ども達が、一瞬で絵本の世界に引き込まれる
包み込まれるような、あったかい抱っこで、あっという間に夢の中
涙を流す子どもが、先生の優しい声掛けでニッコリ笑顔になる
保育って正解がありません
だからこそ、これまでの経験と知識とフィーリングと・・・
職人さんかの如く、子ども達と真摯に向き合い
その日・その時・その子にあった対応を行います。
そんな技術は、後世に受け継ぐべきもの
しかし、それ以上に大切なものを受け継いでいる保育園があります。
「受け継がれるものは、思いやり」
滋賀県草津市にある
可愛い園舎が今回紹介する保育園
くるみ保育
園長先生が大好きな
アルプスの少女ハイジが暮らす山小屋風の園舎
素直でたくましく育ったハイジのように
子ども達が、家庭的な落ち着いた環境のなかですくすく育つようにと
園舎にもこだわりをもって作られました。
こちらの保育園の特徴は
「乳児は担当制保育・幼児は異年齢保育」を行っています。
滋賀県ではこの保育を実施した先駆けとなるフロントランナーです。
1979年の開園当初は一斉保育を行っていたそう。
今から10年前、一部の職員さんの声がきっかけとなり
保育方針を見直し、今に根付く「担当制・異年齢保育」が実施されたそうです。
「こんな保育がしたい」と現場から声があがること
それを園長が受け入れて、保育の仕方を変えること
どちらとも熱意と勇気があります。
当時その声を上げた先生の一人である、まゆこ先生に話を聞きました。
改革に携わった方なので、どんな熱い先生なのかなと思いましたが
非常に温和で優しく話しやすい雰囲気の先生。
当時、懸命に勉強され保育に熱く、
試行錯誤しながら日々を過ごしてこられたそう。
様々な話を伺いましたが、その中でも特に印象的だったのが、
後輩である職員への指導についてのお話。
後輩に対する言葉は意外なものでした。
「今の若い子は~」
「私たちはこんなに頑張っていたのに~」
そんな言葉は一切でません。
「今とは園児数も違うし
私たちは同期も多かったし、時代も違いますしね。」
当時、外部研修で教えてもらった【伝え方】を今も大切にされているそう。
子どもにはもちろん、職員さんに対しても同じように。
「職員に指導したり指摘する際、
伝えたいことをストレートに言うだけではなく
その周りにある、その先生の素敵なところ、良かったところをまず伝えます。
例えば・・・
『ここがすごく良かった。あそこも良かった!
○○先生は笑顔がとってもよかったから子ども達もすぐに受け入れていたし、
クラスが上手くまとまっていたね!
あとは、もう少し環境設定の部分を~したらさらに良いと思うよ!』
良いところを伸ばしながら短所も補う
そんな伝え方を大切にされています。
今は乳児主任というポジションのまゆこ先生。
日常的に保育に入ることは少なくなりましたが
給食の時はクラスをまわって、日ごとに各クラスで一緒にご飯を召し上がるそう。
「○○先生、ちょっと疲れてないかな?」
「○○先生は任されている仕事は荷が重すぎないかな?」
ちょっとした変化でも気づけるようにと
優しいまなざしで先生たちのことも見守っています。
まゆこ先生は
「一人で、職員室で食べるのが寂しいだけなんですけどね~」
そんな風に謙遜されていますが、
職員に対するまゆこ先生の思いやりが垣間見えます。
まだまだたくさんお話を伺いたいところですが
時間がきてしまったので、次の先生のインタビューへ。
次に話を伺ったのは表情がとっても明るく、気さくなえりか先生。
今年で勤務開始して7年目。
音楽大好きな、えりか先生。
好きなアーティストのライブには全国を駆け巡るアクティブな保育士さん。
保育着にも着用するお気に入りのライブTシャツ
プライベートな話も色々伺ったのですが
真剣な話もたくさんして下さいました。
えりか先生が話してくれたのは、くるみ保育園の特徴について。
「私の周りには保育士の知人、友人がいます。
聞く話だと、人間関係がうまくいかなくて辞めた。
理不尽なことが多くて大変で辞めた。そんな話をよく聞きます。
うちの園はそれがないです。
もちろん色んな個性をもった先生がいますが、
自分の感情を通さない、筋が通った指摘の仕方。
自分が~したいからこうではなく、子どもが~だからこうした方がいいのでは?
こんな風に先輩方が教えてくれるので、スーッと自分の中に入ってきます。」
【職員レクリエーションでの写真】
特に熱く話をして下さった人間関係について。
「人間関係がすごくいいです。一押ししたいくらいです!
とにかく先輩方がすごくいい方。
自分もまだまだ後輩に、物事を伝える時に悩むことがあります。
どういう風に言ったらいいか、相手の立場になって考えて言うようにしている。
それも先輩から自然に教わったことです。
内容も大切だけれど、【言い方、伝え方】がより大切。
私はすぐに先輩に聞いちゃうタイプなんです。
後輩にこう言ったけど伝わりにくかったんですよね~って相談します。」
さらに深く伺うと、気軽に相談できる関係性と機会にはこんな理由が。
「プライベートでもお休みの日に先輩や同僚とよく遊びます。
先輩の家に行って、ずーっと5、6時間喋ります。
それが自分にとって大切な時間です。
後輩ともごはんや買い物にもよく行きますよ。」
話しをして下さるえりか先生の明るい表情で
リアルな職員さん達の関係性がよく分かります。
これほどまでに自園の良さをしっかり語って下さったところに
えりか先生のくるみ保育園に対する誇りを感じました。
共に働く、目の前にいる人を大切にする。
そうすることで
「大切な子どもたちを、より大切に」
そんな良いサイクルが生まれています。
今回取材をして感じたこと。
「思いやりを受け継ぐ」のではなく
「自然と受け継がれていく思いやりがこの園に存在する」
あたたかみのあるこの「職人技」に触れてみませんか?
取材にご協力頂いた職員の皆さんありがとうございます!
ライター:野間直樹 ほいコレコンシェルジュ